震災の夜にて
秋田は揺れが大きかったがさいわい停電は一日半程度。ただしうちの場合は人間よりも牛の方が深刻。ほっとけば乳房はどんどん張るし体に変調もきたす。搾るには電気で機械を動かさなければならない。
初日は発電機の手配で夜じゅう近所の牧場を走り回り寝るのも食べるのもままならなかった。金曜日、本来だったら家でボウモアを一杯やってるはずだった。
二日目も電気は復旧せず。エサ、資材の手配に各方面問い合わせて一日終わる。この日が不安のピークだった。夕方明るいうちに再び発電機を借りて乳を搾る。薄暗いなかでいつもよりかなり早めの夕食。夏でもないのなんか変な感じだ。
こういうときでも土曜のワインというのはしっかり頭にある。手持ちのワインはあと三本。先月、某店で手に入れたブルガリアの赤。家の暖房(蓄熱式)も徐々に尽き始めているので夜の寒さに備えて家族四人大事に大事に飲む。
チーズが欲しかったがサバの味噌煮の缶詰がなかなか合う。バニラの甘い香りと深いコク。ようやく緊張の糸がほぐれる。こういう状況でも人は意外と楽天的だ。
そしてその日の晩ようやく電気が復旧する。
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